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俺、ラクガキ [作者:龍蛇]

■3

マリは隠していたことを全てさらけ出した。

マリ「本当に私は泥棒です。だけど・・・病気の母の為に・・・」
ハル「お前の気持ち、よくわかる気がする。よっしゃ決まりだ!一緒に逃げるぞ。
    逃げられるところまではな・・・」
マリ「ありがとう・・・」

ポツリ、ポツリと汚れた街を濡らす、マリの涙。

ハル「泣くなよ。俺がいるから。」
マリ「うっ、うっ、うぇぇぇぇぇぇん・・・!」
ハル「おいおい・・・」
マリ「母に・・・母に・・・渡したいものがあるの。」

そういってハルに小さい小さい羽を見せた。

ハル「おっしゃ。じゃあいくかぁ!」
マリ「この町の周りを流れる、川を渡れば・・・」
ハル「着くんだな!!」

・・・川を渡る、君が住む町へ・・・
・・・逢いたくて、今すぐ・・・
そういう歌をマリはしばしばくちずさんだ。
懐かしいようで新しい歌・・・
そうやってマリの母のいる町に着いた。
マリの母は元気そうだった。ハルが手短に自己紹介を済ませると、マリは自分の母の笑顔を見てさっきの小さい小さい羽を手渡した。

マリの母「アラ、これは何?」
マリ「羽。というか・・・羽みたいなもの・・・『ハネモノ』っていうのかな?」
マリの母「『ハネモノ』ねぇ・・・ごほっ、ごほっ」
マリ「大丈夫!?無理に喋らなくていいのに。」
マリの母「ひさしぶりに会えた娘と、喋らないでいられる親はないわよ・・・」

微笑ましかった。何もかもが。
是が親子か・・・とハルは思った
どうやら、マリが盗んだもの・・・それはこの『ハネモノ』らしい。
話を聞くと、望み通りのなんにでもなるということだ。
別れを告げ、街を出る。マリの望みが叶うまで一緒にいてやる・・・ハルはそう心で呟いた。
しかし、あの男のせいで事態は急変した。まさかこんなことになるとは、二人とも思ってはいなかった。



↓目次

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