惑星のかけら [作者:ケルト民族]
■3
謹慎生活で一週間が過ぎた。俺は生徒指導室をあとにし、
職員更衣室の中を壁と扉でしきって作った休憩室に場所を移していた。
ここには事務用のガラクタが置かれていないと思えば窓もない。
換気扇をつけなかったら、この学校が潰れるまで
空気はこのままだろうと思えるくらいほこりっぽい部屋である。
俺はこの一週間でいろんな先生と出会った。
謹慎している間、俺がいるかどうかも含めて先生が時々話をしにくるのである。
普段授業で一緒になる先生から他学年の先生。
どの先生も「暴力はダメ」とか「自分を大事にしろ」とか「まぁ仕方ないかな」とか
大体同じことを言うが、先生の態度を見てると、どうもどうでもいいことのように思えた。
「ガチャ……君が平田君?
……フ〜ン、暴力を振るいそうな子には見えないけどなぁ〜」
入ってきたのは保険の先生の助手役である朝倉先生。
この学校の第一卒業生ということだけ知っている。
「なんで殴っちゃったの?」
「……ちょっとからかいを受けたんで…」
「…許せなかったんだ」
俺はこの先生に好印象を抱いた。
"真面目にはわからない大胆さを持ってる人"といえば伝わるだろうか。
「…驚いたよ!暴動が起こったっていうから
誰かなぁ?と思ったらおとなしい平田君だもん」
俺は掃除のじかん、保険室に手洗い場の液体石鹸用を補充するため、
いつも保健室に来ていた。そのときおぼえられたのだろう。
「でもやっぱ暴力はいかんと思うよ。殴られたらイヤでしょう?」
――――そんなことわかっているのだ。幼いとき何度も親に言われた。
だから今まで決して誰にも暴力を振るわなかったんだ。たとえ弱い人でも。
人間はみな"応報主義者"だってことも知っている。でも違うんだ。問題は。
なにかわからないこのモヤモヤ。そして一番の悩みであるこの"こわがり"なんだよ。
↓目次
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