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飛ぶカモメ [作者:七味Y]

■3

『サナエちゃんにはいってないよ。スカウトされたのは君だけだからね。』

・・・サナエがスカウトされてない?
天国から地獄どころじゃない。閻魔様の胃袋に叩き落とされた気分だ。

「そんな、おかしいじゃないですか。俺とあいつはコンビなのに・・・。」
杉平は、口笛でも吹き出しそうな様子で言った。
『ま、しょうがないよ。あの子には才能と実力がなかったってだけの話さ。君から言いにくい様なら僕が言っといてあげるよ。』
一気に頭に血が上った。
「いいえ。結構です。」

俺は力任せに電話を切った。
今まであのうすらハゲに腹が立ったことは数え切れないけど、殴ってやりたいとまで思ったのは初めてだった。上司と奥さん前ではお世辞ばかり言って、影で悪口言ってる杉平より、サナエの方がずっと立派だ。
ただ、暴力は勘弁してほしいけど。

あいつにサナエの何が分かるってんだ。
スベったときの恥ずかしさも知らないくせに。
サナエのいい所を見ようともしない。

つーか、俺ってこんなに熱いキャラだっけ?
「でも、有名になるチャンスを逃すわけにもいかないよなぁ。」

澄み渡った夜空は、俺の独り言を静かに飲みこんでいった。



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