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愛のことば2  [作者:ユウコ]

■ 3

僕らは青い空の下に映る町を歩く。
彼らの色に染まったらきっと世界は平和になるのだろうか。
そんな訳も分らないことを考えていた。僕が青色が好きなだけだからだろう。

人影のない町はずっと昔見た映画に似ているような気がした。
そう、モノクロの画面の中に俳優が一人で歩いているのだ。ただ、ひたすら町を歩く。
きれいに舗装された道だったり、荒れ果てた道だったり・・・・・・。
そして、道が変わるごとに音楽も変わっていた。
踊りたくなるようなアップテンポな曲だったり、見ているとしんどくなってしまいそうなくらい暗い曲になったり・・・・・・。
まるでその映画の中にいるような感覚。
君はそれを感じているのかは分らないが、僕の心はそわそわしていてなんだか落ち着かなかった。
僕は君の手を握りなおそうとしたその時・・・・・・。

「あ・・・・・・」

君は急に立ち止まると空を見上げた。同時に表情がこわばる。
空を見上げると、真っ黒なペットボトルのような形をしたものが浮いていた。
そして、それは家が立ち並ぶ町の下に落ちた。
一瞬光ったかと思うと、焦げ臭い匂いが僕らの鼻を駆け巡る。

とうとう恐れていた空爆が来たんだ。

僕は君をかばうように抱きしめると、そばに生えていた大きな木の下に逃げ込んだ。
君は僕に抱きついて震えている。
爆弾の落ちる音は半端じゃなかった。
耳が切り裂かれるんじゃないかと思うくらいひどかった。

僕は遠めで町を見やる。

町は色とりどりの花が咲いていた、ように見えた。

それは大きな間違いだった。

君の咳き込む声で僕は我に返った。
君は白い何かに包み込まれていた。
僕は白い何かを払おうと一所懸命振り払う。
でも、白い何かは振り払っても次から次へと表れては僕らに襲い掛かってきた。
その白い何かは僕の肺に入り込んで暴れだした。
僕は思いっきり咳き込んだはずみに抱きかかえていた君を地面に落としてしまった。
僕は地面に這いばり、君を抱きかかえる。そして、抱き合った。

もう僕らには時間は残されていない。

せめて、白くなってしまう前に一言だけ・・・・・・。

ずっと愛しているから・・・・・・。

 

↓目次

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愛のことばを"戦争の歌"として歌詞解釈をして、小説っぽくしたんですが、小説でも成り立つかなと思い投稿しました。
男性は女性と一緒にいるという感じがしたので、病気だから戦場に赴く事ができなかったんじゃないかと解釈しています。
戦争によって犠牲にされてきた悲しさが伝わればいいかなと思います。