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ただ春を待つ  [作者:きらり☆]

■3

遥貴だ。
私は何か彼を怒らせるような事をしたか歩きながら必死に考えた。
終いにはだんだん訳の分からない妄想まで入ってきて酷く混乱していた。

遥貴は誰もいない廊下の端まで行くとやっと振り向いた。
そして微かに口が開き、一言話した。
「一昨日叔父さんのアトリエの前にいたでしょう?」全く無駄のない話し方だった。
私は一瞬何の事か分からなかった。
「アトリエって?」
「ほら、変な生き物みたいな建物の。正面からずっと覗いていて雨が降り出したから慌てて帰ったでしょう。」
ああ、あれはアトリエだったのか。一昨日見たへんてこな建物の事を鮮明に思い出した。
「それで叔父さんが河田をモデルにして絵を描きたいって。」
頭の中の整理がつかなかった。
私をモデルに?何故?
ひょっとして遥貴は私をからかっているのかもしれない。
そんな気持ちが強くなり、だんだん此処から逃げ出したくなった。

気が付くといつの間にか走って教室に戻っていた。
何故か心臓がバクバクしていた。
奈々代がニヤニヤしながらこっちを見ている。
しかし今は遥貴の言葉たちが私の頭の中から出ていかなかった。



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