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ただ春を待つ  [作者:きらり☆]

■2

次の日私は風邪を引いた。39度の高熱だった。
昨日雨に打たれたのが原因だろう。
月曜日なので父も母も仕事に出てしまう。
定時制で普段夜間に高校に行っている兄も今日に限ってバイトでいない。
昨日から降り続く雨がしとしとと窓の縁に弾ける。
熱のせいなのか天井がいつもよりぼんやりしている。

ブーンブーン…携帯の音で目が覚めた。
いつの間にか寝てしまっていたのだ。
メールを見ると2件着ていた。1件は母から。2件目はクラスでも仲の良い奈々代からだった。
「真理子、今日どうしだの?!具合悪いの?今日は遥貴君もお休みだったんだよ〜もしかしてデート?!お邪魔しましたー!」
メールを読み返し、思わずクスっと笑いが零れた。
遥貴とは親同士が仲良く幼稚園からの付き合いだ。
隣のクラスで叔父が美術家の一見変わり者であり、無口で背が高くメガネをしている。
その独特のオーラのせいなのか女子からの評価も高いらしい。
しかし惜しい事に私には、ただの変人にしか見えない。
そんな事を考えているうちにまた、夢の中に入っていた。

次の日、昨日まであった高熱も雨も嘘の様になくなり晴れてはきはきしていた。
支度を済ませ学校へ向かう。また春の匂いがし、足取りも軽かった。

学校もあと一週間で春休みに入る。4月からは中学で最高学年の3年生だ。
入学した時に憧れだった先輩の様にはなれているのだろうか。1年生の私達から見えた3年生はとても大きくもっと大人っぽかった気がする。
しかし入学当時大きかった制服が今ではこんなに小さいのだからちゃんと成長しているのだろう。
母や担任の先生は私達に対し、やたらともう中学3年生なんだから。受験生なんだから。という言葉を使ってくる。
そんな言葉を発せられても受験なんか体験した事のない公立中学生達にはただプレッシャーにしかならなかった。

学校につくとすぐさま奈々代が駆け寄って来てオーバー過ぎる話し方で昨日はどうしたのか聞いてきた。
終いには本当に遥貴とデートしていたのか問い詰められる始末だった。
私がただの風邪だと告げると少しがっかりした様だったが心配してくれた上に有り難く説教までしてくれた。
暖かな日差しに照らされながら1日はあっと言う間に過ぎて行った。

お昼休み、クラスの子と数人で卒業する先輩の為に紙を折り花のブローチを作っていた。
「すみません、河田真理子さんいますか?」
不意に名前を呼ばれたので驚いて顔を上げた。
そこに立っていたのは背の高いメガネの男の子だった。




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