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花泥棒  [作者:優]

■13

月が2人の頭上まで昇った頃秀が目覚めた。
玲奈の顔を見るやいなや飛び起き、玲奈との距離をとったあと何度も謝る。

「こ、こんな時間まですみません!ずっと寝てたみたいで、その、頭重かったですよね?すみません…」

「大丈夫よ。ね、気にしないで」

玲奈は背伸びをし、空を見上げた。秀もつられて空を見る。
星の小さな光の中で、月が黄色く輝いている。

「ねぇ」

空を見上げたまま玲奈が話しかける。秀は月にみとれながら何ですか、と答えた。

「私は、あなたが摘んできてくれる花が好きよ。本当に綺麗だもの。
これからも…摘んできてくれる?」

「いいですよ。玲奈さんが喜ぶならいくらでも。玲奈さんが…僕に振り向いてくれるまで」

玲奈が驚いて秀のほうを向く。遠回しではあるが、秀がここまではっきり玲奈への気持ちを言ったのは初めてだったのだ。
秀は恥ずかしさを静めるように大きく深呼吸する。

「少し寒くなりましたね…そろそろ帰りますか?送っていきますよ」

秀は玲奈の返事を聞かずに吹樹原の入り口へ歩いていった。
玲奈はその背中を追いかける。手にはしおれた美しい花を手に持って。



秀と玲奈が吹樹原を出た頃、フラワーショップすみれの2階で店長が歓喜の声をあげていた。

「おお、こりゃ見事!あいつもよくまぁこんなに立派に育てたなぁ」

興奮する店長の前には秀の育てているカトレアがある。
昨日まで誰が見ても分かる程元気の無かったカトレアは、いつの間にかたくましく美しい花を咲かせていた。



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