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ビー玉  [作者:Larkheart"95]

■ 後編

クラスメートからのお見舞いのフルーツも食べきってしまい、またビー玉を通して岬を見る日々が来た。
そんなある日、ビー玉を床に落としてしまった。
ダンデはすぐに拾ったが傷が付いてしまった。
ダンデはその傷を見て何故かもやもやとした気分になり。そのままベッドに倒れた。

1時間後、担当医は慌てていた。急にダンデの容態が悪化したのだ。顔色が悪くなり、うなり続け、高熱になった。
応急処置として解熱剤と栄養剤が投与されたのだが不安な状態に変わりはなかった。
夜中。外では嵐が吹き荒れていた。岬の岩も削り取られそうなほどの高波も発生した。
中でダンデは虚ろな目でサナトリウムの廊下を徘徊した。
医療室のメスを片手に握り、カーテンを引き裂き、それに飽き足らないのか、自分の腕に傷をつけた。
彼の頭には既に思考という概念はない。魔物の操り人形と化していた。
薄笑いを浮かべ深呼吸した瞬間、血を吐き、その上に倒れた。その廊下は赤い海となった

翌朝、外では虹がかかっていたが、ダンデの部屋は薄暗かった。
…この世界のすべては夢なのかなぁ。
ふとダンデはこんなことを考えていた。誰かが昔言った
「自分は誰かの夢の中で生きていると」
ホントにそうなのか知りたかった。「僕の夢も覚めるかなぁ」と
ただ天井を見上げていた。虹がかかった海はまだ荒れていたが、ダンデの視界には入っていない。

「…ダンデ、綺麗なビー玉でしょう?」

ダンデは突然姉が見え、こんな言葉が聞こえた。

「…姉さん…呼んでる?」

彼の姉は微笑んだ。手を差し伸べて。
ダンデは静かに泣いていた。涙の粒は頬をつたって毛布に吸い込まれた。
よく見ると姉の目からも水晶の粒が落ちて、ビー玉に吸い込まれていた。
ビー玉が輝きを取り戻し、澄み切った空を映した。

「綺麗な空だなぁ…いつかは飛べるかなぁ」

ダンデはビー玉を見て呟いた。姉は手を差し伸べてこう言った。

「飛べるわよ。ほら、つかまって。」

深い闇が続く中でもいい。姉さんといればきっと大丈夫。またビー玉で遊べるんだ。
彼はビー玉を握り締めて、その手を姉のほうへ伸ばし、姉はその手ををしっかり掴んだ。優しいぬくもりはまだ残っていた。
しかしビー玉はダンデの手からこぼれ、姉の手をすり抜けて床に落ちた。

パチンという音を残し、ビー玉は割れた。



↓目次

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