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ビー玉  [作者:Larkheart"95]

■ 前編

ここはある北欧の国の田舎。
ここには独特の治癒不可能な疫病が毎年多数の人々を襲った。
夏になる頃、雪が溶けると同時にウイルスが解凍され、初秋まで流行するため『夏の魔物』と呼ばれた
病院には特設のサナトリウムが造られそこにかかった人は運ばれる。しかし、誰一人、帰ってくることは無かった。
一度入った病室は一週間たてば空室になるという有様だった。
そしてまた今年も患者が運び込まれた。まだ14歳の少年である。
名前はダンデ。一昨年に姉も魔物にかかり、16で命を散らせていた。
少年に残った彼女の形見はたった一つのビー玉だった。このビー玉でこの姉弟はよく遊んでいた。
病室で横になってもこのビー玉を机に乗せてじっと見つめていた。
その先には岬があった。人気も少なく、海に落ちないようにするためのガードレールはボロボロで車を防げるとは到底思えなかった。
その先では日が暮れようとしていた。海が赤く染まり、ビー玉もきらきらと輝いた。

「まだきっと生き残れるよ。きっと病院の外でこの夕陽を見てやるんだ。」

ダンデはそう呟いた。
まだ彼の容態は落ち着いていた。入院二日目であり、熱もまだ低いほうだった。
しかし、まだ特効薬も開発されていないし、ひたすら延命のための生活が続く。抗体が回復するのを待つしかなかった。
このサナトリウムに配属される医者も、充分注意が必要だった。常に潔白を保たねば自分も死んでしまう。
夜になっても岬の灯台は点かない。それだけ寂しいのだ。

三日目になった。
初めてお見舞いとしてダンデに手紙などが届いた。
両親と親友のL君から。それから学校のクラスのみんながフルーツを送ってきてくれた。
ダンデはフルーツが好きであったが送られてきたフルーツは格別だった。
クラスの人数…17個のフルーツが送られてきていた。これを全部食べるまで生き残る。そして頑張って治したい。そう考えていた
後はずっとビー玉を見ていた。散歩の時間になっても、彼は左手に握り締めて離さなかった。
部屋にはテレビも付いていたが見なかった。


そのままビー玉と岬を見ている日々が二週間以上も続き、医者に驚かれるほど彼は生き残った。フルーツは全部食べた
しかし、まだ退院は出来なかった。熱が収まることは無かった。



↓目次

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