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神様のサイコロ  [作者:ユウコ]

■ プロローグ

祖母が亡くなった。享年89歳、世間一般で言えば長生きになるだろう・・・・・・。
もし、あと2年生きていたらめでたく90歳を迎えるはずだった。

私は祖母の遺影に視線をやる。
小柄で世の中の穢れを知らない少女のような純粋な微笑みを浮かべている祖母が私の目に映る。
それは、苦労を知らない少女の笑みのようだった。
実際、祖母は彫刻家を父に持つ家庭でお嬢様として育ち苦労は知らなかったというのを聞いたことがあった。

「あの日、こけなかったら・・・・・・か」

私はぽつりと言葉を落とす。

私の祖母は軽度の認知症で老人ホームに入居してた。そこで事件は起きたのだ。

いつもと変わらぬ晴れの日、祖母は食堂に向かうために廊下を歩いていた。
が、足を滑らせ顔を打ってしまい、顎の骨を骨折した。

それ以来、祖母は何も食べることが出来なくなってしまった。
そう、顎の骨が治っても、精神的ショックが大きかったせいで・・・・・・。
最終的には点滴だけで過ごす生活になったが、点滴だけでは栄養が持つまい。
祖母は徐々に体力が衰え衰弱死という形を向かえたのだ。

あの日、こけなかったら祖母は長生きしていたのだろうか・・・・・・。
もし、祖母の精神がもっとタフだったら、顎が治っても再び食事が出来て今よりもっと生きたはずだろうか。

私はふと思った。

人生って良くも悪くもその先の未来を決めるのは予言者でもなく占い師でもない。
紛れもなく自分自身。そう 神様の悪戯でもない。すべて自分で引き起こしている・・・・・・。

「ふーん、君はそう考えるんだ」

私の背後から少年の声が聞こえた。私は目を大きく見開いて振り返る。

「おっ、俺が見えるんだ」

灰色の髪と瞳をした少年が感心した表情で私を見下ろしていた。

「でも、大抵そういう日って何かがあるんだよね。神様がサイコロを振るのさ」

「・・・・・・サイコロ?」

「そっ、サイコロの目によって幸か不幸になるか決めるのさ。君の婆ちゃんは1と3。
13日の金曜日…縁起悪いね〜。君は1と6。足してラッキーセブン。良かったね」

少年はそう言うと姿を消した。
呆気にとられた表情で壁を見つめていた私がいた。




神様のサイコロ・・・・・・それは良い未来も悪い未来を決定する一つの要素であり、私達はそれにもて遊ばれてる。


今日も神様はあなたのサイコロを振っている。



↓目次

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