スピッツ歌詞研究室 オリジナル小説
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夜を駆ける [作者:すず]

■一

冬は嫌い。寒いし、駅前にセンスの悪いイルミネーションが登場するし、何より夜が長いから。

沸騰したポットの蓋が、カタカタと踊る音で目が覚めた。お湯を沸かしている間に眠ってしまったらしい。
ぼうっとした頭で起き上がり、白いほうろうのポットから、ムーミンのマグカップにお湯を注ぐ。
レディグレイの香りが、辺りをふわりと包んだ。
午前二時。テレビの中では、お笑い芸人と可愛い女の子達が、楽しそうに笑っている。
この時間に流れてくるバラエティ番組の底抜けな明るさに、わたしはいつもほっとする。
ひとり暮らしにはもう随分慣れたが、夜はたまに寂しくなる。特に冬の夜には。

よる。わたしは夜が嫌い。冬も嫌いだから、冬の夜はたまらなくいやだ。
冬だけでもいいから、夜がこなければいいのに。そんなことを考えてしまう。
早く出てこい、おひさま。そう祈りながら、わたしは布団にもぐりこんだ。




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