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田舎の生活 [作者:瑛] ■3 ブチッと音がして、声が消えた。彼女がおもしろくなさそうに溜息をつく。 「おもしろくない。空は見上げても台風だもん。夢も希望もないもん」 彼女が今さっきみていたテレビ番組の文句をブツブツといい始めた。観ていたのは、なんだか 俺は黙々と、彼女と二人の夕食を過ごしている。 「…ね、直ちゃん、新婚みたいじゃない?」 彼女がうんうんと頷いた。 「新婚か、なんか取り残された兄妹って感じ。台風の日に」 新婚と兄妹ってかなり違うと思うんだけどな。とはいっても、彼女も俺もめずらしく一人っ子で、兄弟は居ないのだけれど。 「新婚というより…家族、みたいだよな」 彼女が笑った。そうかもね!と明るい声で言った。 突然ガッと音が響いた。彼女はびっくりしたようだった。続いてざざざざと雨が叩きつける音が聞こえる。 「いま、なんか倒れたよね、ガッって」 もしかしたらこの台風で自転車も息を引き取るかもしれない、とおもった。 「やっぱ、玄関に入れておけばよかったかな…自転車」 俺は彼女の言葉を耳に、漬物に箸をのばした。口の中に入れると、やさい本来の味がする。やっぱりちょっと塩がうすい。 「大丈夫。たぶん」 根拠は無いけどそう言って、今度は味の染みた煮物を口にはこんだ。 「…直ちゃん、」 彼女の手が止まった。つられて俺の手も止まってしまう。それを見た彼女が、またおかしそうにくすっと笑う。 「なんだよ」 彼女がそう言ってから、暫くの沈黙が流れた。喋っていないと、台風が迫る音が耳の中に充満する。 「あのね、お父さん入院したの」 突然言葉が切り出された。彼女が愚痴を言うように、話し始める。 「お酒の飲みすぎだって。ヒドイとおもわない?」 彼女は「おとといだよ」と、軽く言い放つ。 「家ではね、ほとんどお酒なんて飲まないの。なのに飲みすぎ。なんだそれって感じ」 彼女の言葉がなにを意味しているのか、推し量ることができた。 「母親のほうは、」 彼女の笑顔の中に、沈鬱な表情が一瞬見えた気がした。 ↓目次
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