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チェリー [作者:ミルク]

■1 

―――「愛してる」の響きだけで 強くなれる気がしたよ―――

入学してから2週間。中学校にはまだあんまり慣れてない。
私は花里稔梨、中学1年生。
今日はバレー部の練習がないというので、早めに帰ることにした。
なんか明るいうちに学校出るの久しぶりだなあ。ボーっとしてたら、顔に何か当たった。
あっ、桜の花びら・・・。
見上げると、大きな桜の木があった。
これがうちの学校の自慢なんだよね。もうほとんど散っちゃってるけど。大きいなぁ・・・。
「誰?」
一瞬、木が喋ったのかと思ってびっくりした。
すぐに木の後ろから男子が出てきた。
慶「何してるの?こんなところで」
稔梨「何って・・・これから帰るところなんだけど。君は?」
やばっ。“君”なんて言っちゃって、先輩だったらどうしよう。
でも、そんなわけないよね。だってこの子私より小さいし・・・。
慶「オレはねっ、かくれんぼ♪サッカー部の仮入部に来たんだけど、今日は先輩たち遅くなるみたいだから遊んでるんだ」
えっ?この子、先輩の怖さを知らないのかなぁ。でもとりあえず同学年ってことに一安心。
男子「あーっ!慶みーっけ!早く戻って来いよー」
慶「はあ〜見つかっちゃった。オレもう行くね。そーだっ、名前何ていうの?」
稔梨「えっ、あ・・・1年5組の、花里稔梨」
突然名前訊かれたからちょっとドキッとした。
慶「オレ、3組の桜沢慶。よろしくっ☆じゃーねっ!花里さん♪」
稔梨「あ、ちょっと・・・」
彼は友達の所に走って行った。
稔梨「桜沢慶くんかぁ・・・」
よんわかんなかったけど、なんか小さくて可愛いなぁ。

「花里、何ニヤけてんの?」
気がつくと横に担任の柏原が立っていた。うわっ、どこから沸いてきたんだよ、この人。
稔梨「なっ、なんでもないですっ!さよならっ」
私は頭の上に?を浮かべている柏原を無視して走り出した。

残り少ない桜の花びらが、春の柔らかい風の中で舞っていた。

 



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