ぼくの名前 [作者:星待ち人]
「誕生日おめでとう、みゆ。ほら、プレゼントだよ」
「ありがとう、ママ、パパ!!……わぁ、可愛いくまちゃんだねぇ!みゆ、大切にするね」
―――こうしてぼくは、みゆちゃんの家族になった。
「くぅ」って名前をつけてもらった。
これからぼくは、「くまのぬいぐるみ」じゃなくて「くぅ」なんだね。
すごく嬉しいな。
名前があるのって、素敵なことだね。
みゆちゃんが出掛けるときには、いつも一緒に連れて行ってくれた。
みんなといろんなものが見れて、すごく楽しいよ。
朝、おはようって声をかけてくれた。
夜、おやすみって言って、みゆちゃんと一緒の暖かいベッドに寝かせてくれた。
ぼく、すごく幸せだなぁ。
あれ?
気づいたらぼくは、家の中に一人ぼっちで座ってた。
なんで、なんで?
みんなどこへ行っちゃったの?
みゆちゃん、ぼくのこと忘れちゃったのかな。
でも今日だけだよね。
次はまた、きっと一緒に連れてってくれるよね。
でもぼく、やっぱり寂しいよ。
はやく帰ってきてね。
だんだん、みゆちゃんがぼくと遊んでくれる時間が少なくなってきた。
今日もみゆちゃんは、お父さんやお母さんとどこかへ行ってしまった。
ぼくがいなくても、寂しいって思ってくれないのかな。
「おはよう」も「おやすみ」も言ってくれなくなった。
みゆちゃん、怒っちゃったの?
話しかけてもぼくが喋らないから、嫌いになっちゃったのかな。
ごめんね、ごめんね。
でもね、ぼくほんとは嬉しいんだよ。
大好きなみゆちゃんが話しかけてくれるの、嬉しくて嬉しくてたまらないんだよ。
玄関から、みゆちゃんとお母さんの楽しそうな声が聞こえる。
今日お父さんはお仕事だったみたい。
ふたりは大きな買い物袋を抱えている。
「ねぇねぇ、はやくうさちゃん出してー!」
「はいはい。なんて名前にするの?」
「みゆね、もうちゃーんと考えたんだよぉ。ミミっていうの!」
「ミミちゃんにしたのー。可愛いね」
みゆちゃんの小さな手に抱っこされているのは、真っ白なうさぎのぬいぐるみ。
「今日からみゆと一緒に寝るんだぁ。ね、ミミ?」
みゆちゃんはニコニコと嬉しそう。
よかったね、みゆちゃん。
ぼく、この家に来てすごく楽しかったなぁ。
今は悲しいけど、でもぼく幸せだよね。
だってあのままずぅっとお店にいたら、ぼく寂しいままだったんだよ。
でもみゆちゃんのもとへやってきて、ぼくは短かったけど幸福な時間を過ごせたんだ。
ありがとね、みゆちゃん。
ありがとう。
ミミちゃんを可愛がってあげてね。
ぼくと同じように、幸せにしてあげてね。
大好きなみゆちゃん、ひとつだけお願いがあるんだ。
ぼくの名前、忘れないでね―――
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