悪魔のような君へ [作者:ユウコ]
■第5話
「僕は君に会ったことがあるんだろ? 」
あれから何日経っただろう。
気がつけば2人地獄に行っていた。
その2人目がマゾの青年だ。
地獄に行く日、青年は何回もデュノに鞭で打たれていた。その時だけは違った。
性的な快感を感じたときの叫びをあげていた。
さすがにデュノは顔を真っ赤にしていたようだが、地獄へ旅立つ青年を思ってか、冷静を装って鞭を打っていたようだった。
青年に鞭で叩いた後、なぜか僕のところへやってきた。
「・・・・・・さすがに恥ずかしかったわね」
黙々と実を拾う僕にデュノはポツリと言葉を落とす。
「ええい!」
デュノは僕を鞭で打ち始めた。
「えっ、ちょっと!」
僕はデュノの鞭をよけながら逃げ回った。一体、何がしたかったのだろう・・・・・・?
その翌日、僕はまた夢を見た。最近、ずっと三つ編みの女の子がずっと出てくる。彼女が出てくる夢は不思議と僕の胸を切なくもドキドキしてしまう。
僕は固い舗道の上で立っている。道の先には三つ編みの女の子がベンチの上で座っていた。その隣には幼かった僕がいた。
―わんちゃんかわいいね。
―うん。
幼い僕は笑顔で犬を抱き上げて笑っている。
そういえばこんなことがあったっけ・・・・・・。
―ねぇ、なんて名前にする?
女の子は笑顔で僕に聞いてくる。幼い僕は少し考えて少しにやけながら、
―ゆいか、にしよっ。
―えー、わたしの名前じゃん。
あぁ、そうか。彼女の名前は結佳だった。なぜ、今まで忘れてたのだろう・・・。
「あなたが拾った犬は今もうちで元気に暮らしているわ」
え・・・・・・この声は・・・・・・?
僕はハッと目を開けて飛び起きた。窓から見える外の景色は相変わらず暗い。
初めて部屋に入ったときは窓なんか見当たらなかったが・・・・・・。そこはあまり深く考えないことにした。
「食事よ」
僕の目の前にデュノが現れた。大分、慣れたので驚かなくはなったが、気を抜いている時に現れたらやはり、未だに驚く。
「冗談」
デュノは意地悪そうに笑った。
「じゃあ、何ですか?」
「あんた、勝手に私の夢を見たでしょ」
デュノはベッドに腰掛ける。
「え・・・・・・?」
さっき見ていた夢のことか?
「でも、私のこと思い出してくれたみたいね」
デュノはちょっと幸せそうな表情だった。じゃあ、目の前にいるのは僕が幼稚園の時、天使と呼んでいた結佳だったのか?
「じゃあ、君はゆ・・・・・・」
「その名前は捨てたから呼ばないで」
デュノは眉間にしわを寄せ真剣な表情で僕の唇を押さえた。
「ごめん」
僕はどうすればいいか分からなかったので、とりあえず謝った。
「分かればいいのよ」
デュノは長い髪をさらりと掻き分けた。僕の顔に髪の毛がかかり、くすぐったくなってくしゃみをした。
「まさか、あなたがここに来るとはね」
「あ、それは・・・・・・」
まさか、あの時、空が飛べるような気がしたから飛び降りたなんて言えない。
「でも、人間だって一回ぐらい飛びたいよね。特に青空の下なんか気持ちよさそう・・・・・・」
やっぱりお見通しか。だけど、僕が飛んだのは夜空の下なんだけど・・・・・・。
「私は空を飛ぶ前に死んじゃったんだから」
デュノは皮肉な笑みを浮かべた。
その笑顔は僕に対する妬みにも感じられた。デュノは一体、過去に何があったんだろう・・・・・・?
そして、どんな経緯があって悪魔になってしまったのだろう・・・・・・?
↓目次
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