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悪魔のような君へ [作者:ユウコ]

■第3話

容赦なく鞭を振るう君は動物使いなのか?

僕はデュノが出て行った後、なぜか睡魔に襲われそのままベッドに倒れ込み眠りに入ってしまった。

「1008番!起きなさい!!」

デュノの甲高い声が響く。頬に何かが当たった。僕はうっすらと目を開ける。そこには何かを振るっているデュノの姿があった。
デュノは手に持っている何かを再び僕の頬に当てた。

「いっ、痛っ!」

僕は飛び起きた。デュノが手に持っていたのをよく見ると黒い鞭だった。

「朝よ。さっさと外に出なさい」

デュノは僕を睨み、踵を返して部屋を出て行った。身体がまだ起きていない僕はフラフラともたつきながら、部屋のドアに手をかけた。

ドアの先には長い廊下が伸びていた。同じようなドアがいくつかあり、ドアの上部には番号が振ってあった。
僕のいる部屋のドアには1008と印字されていた。
ろうそくの灯りだけでともされた薄暗い廊下を渡っていく。廊下の先には大きな扉があった。僕は両手を使って扉を開けた。

「さ、これ持って実を採ってきなさい」

外にでると目の前にデュノがいた。僕は驚いてわっ、と短く叫ぶ。

「驚くことないじゃない。早く採ってきなさいよ」

デュノは黒い籠を僕に渡した。僕は籠を受け取ったが、一体どの実を取ればいいのか分からなかった。

「面倒臭いわね・・・・・・。あの草むらに茶色の実が落ちてるから、それを採ってくるの。間違っても赤色の実は採ってこないでよ」

デュノは南側の草むらを指差した。

「あ・・・・・・うん・・・・・・。」

「分かったならさっさと行きなさい」

デュノは僕の足に鞭を当てた。僕はその場から逃げるように慌てて草むらへと向かった。
僕は草むらの中をしゃがみこんで茶色の実を捜した。
周りは草むらと枯れ果てた平野で覆われていた。そして、暗かった。”地獄への待合室”は常に暗いのだろうか・・・・・・?
僕は草むらの中を掻き分け、実がないか探していた。そんな暗いところでの作業は目が悪くなりそうだ・・・・・・。
そもそも死人にも視力が落ちるかなんてことは分らないが・・・・・・。
そして、五歩進んだところで実らしきものがあった。

僕はそれを拾った。色は良く分からなかったが栗みたいだった。デュノが言ってた茶色の実は栗のことだったのだろうか。
僕はとりあえず実を籠の中に入れた。

「君、新参者か」

僕の横から声がかかる。彼も自殺した人だろうか、ちょっと暗そうな青年だった。

「あ、はい」

「あの娘、あんなに可愛い容貌だけど中身はすごく怖いから気をつけた方がいいよ」

青年は僕の耳元でそう言うと、腰をかがめて草むらを掻き分けた。

「私語は厳禁って注意をしなかった?」

いつの間にか僕の前にデュノが現れた。僕はまたわっ、と短い叫び声をあげた。
僕と青年は実を採るのを中止させられ、デュノに鞭を打たれていた。

「全くねえ、地獄直行じゃない分マシだと思いなさいよ。ええ?」

デュノは容赦なく鞭を振るう。僕は10回だけで済んだが、青年は常習犯らしく執拗に鞭に打たれていた。

「あっ、いっ・・・・・・。す・・・・・・すいません・・・・・・」

青年は痛そうだったが、ちょっと違和感を感じた。何か気持ちよさそうな表情にも見えたからだ・・・・・・。
ひょっとして彼はマゾヒズム・・・・・・なのか?
だとしたら僕は被害者になるだろう。
彼女に鞭を打たれるために僕を巻き込んだのだから。

「はぁ・・・・・・疲れた・・・・・・あんたは50回目だから500回たたいてやるつもりだったけど体力が持たないわ」

デュノは大きく溜め息をついて、手で払った。悪魔も体力を消耗するようだ。彼女は肩で息をしている。
僕も大きく溜め息をつきたかったがデュノに睨まれそうなのでやめた。
僕はデュノに鞭で打たれた腹をさすりながら実を拾い続けていた。
しばらくすると、デュノが僕の前に現れ、すっと手を差し伸べた。僕はなにを思ったのか彼女の手を握ろうとした。すると顔に鞭が飛んできた。

「バカ。籠を渡しなさいよ」

「あ・・・・・・はい・・・・・・。」

頭がガンガンと鳴り響いてめまいを起こしていた。僕はデュノに籠を渡すとその場に倒れ込んでしまった。





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