スピッツ歌詞研究室 オリジナル小説
スピッツ歌詞TOPオリジナル小説>悪魔のような君へ

悪魔のような君へ [作者:ユウコ]

■第1話

僕は眠っていた。
そこはとても心地良い。
身体が宙に浮いてふわふわしている。
ずっと力を抜いて身体を預けていたいくらい気持ち良い。
でも、なにか変だ。
僕は肝心なことを忘れている。
さっきまで僕は自分の部屋にいた。
次に窓をあけて空を飛んだんだ。
いや、待て。
人間は空を飛べるはずがない。重力というものに逆らえるわけがない。
じゃあ・・・・・・。
僕は・・・・・・。
自殺を?
僕は飛び起きた。
すると、今までの心地よい感覚はジェットコースターに乗って頂上から急降下するときのふわっとした感覚と共に消えてしまった。
「ここは?」
僕は誰もいないはずなのにふと言葉を漏らした。もちろん、僕の声に問いかける返事もなければ返ってくるものすらない。
目の前は真っ暗な闇だった。どこにも光が見当たらなかった。自分の姿も全く見えない。
その時、僕は初めて恐怖を感じた。
今になって光のありがたさが分かったような気がする。
しばらくすると、僕の目の前から足音が聞こえてきた。
足音の主はハイヒールでも履いているのだろうか。甲高く音が響く。
僕は床に腰をつけたまま後ずさりをする。
足音の主が早く歩いているのか、僕が後ずさりをするのが遅いだけなのか足音はだんだんと大きくなる。
「愚か者が」
少女の声だ。
僕は後ずさりをやめ、姿の見えない少女を探す。
「真っ暗じゃ何も見えないから、明るいところへ行くわよ」
少女は手を伸ばして僕の腕を掴んだ。暗闇のせいで神経質になっていた僕は思わず叫ぶ。
「腰抜け男」
冷たい言葉が胸に突き刺さる。
僕は一体、どこへやってきたのだろう・・・・・・?





↓目次

【プロローグ】 → 【第1話】 → 【第2話】 → 【第3話】 → 【第4話】 → 【第5話】 → 【第6話】 → 【第7話】 → 【第8話】 → 【第9話】