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ミカンズのテーマ [作者:ミカンズ]

■8

何もする事が無くなったって言えばそうだった。
部活も三年の夏の試合で辞めたし。
インフェスを諦めて一年経った。僕は玄とちづるとはおんなじクラスじゃなくてユウスケと同じだった。

「ミカ。お前って本当変わったよな。どうしたんだよ」 ユウスケが言う。

「インフェスの寂しさから戻ってないんだよ。よくユウスケも馬鹿なまんまでいられるなぁ。尊敬するよ」

「俺はやっぱしミカみたいに頭も良くないし、大学も行く気ないから。部活も楽しいし」

ユウスケはのんきで気楽だから良いよなぁ。僕もそんなんになりたい。と言おうとしたけれどユウスケ馬鹿にする気がした。
秋が過ぎれば冬が来る。勉強だけで時間が遮られる。そんな日々が嫌だったけれどもう今と違う。
玄の大きな声も聞こえないし、やっぱりちづるの顔もみれない。

「なぁ。玄転校するらしいよ。」 ふとユウスケが小声で言った。

「え?」

「いや、そういう噂聴いたし。東京に引っ越すんだって。お母さんが再婚して」

「へー。いつぐらいに?」

「分かんないなぁ。それは」

僕らの声は野球部の繰り広げる試合の音に消されそうになった。
僕はちづるに聴いてみる事にした。「なぁちづるてか、、、ちづる!」
ちづるは茶色い髪の毛をくりくりにしていて気づくのに時間がかかった。玄は隣にいない。

「あ、葉山、、。どしたん」

ちづる、今僕の事やっぱりミカじゃなくて葉山って言った。
何を言えばよかったんだっけ。ちづるは仲の大して良くない人を名字で呼ぶ。
みんな記憶をなくしたのかな。
ユウスケはあんなにインフェス張り切ってたのに。ちょっとまてちづるだって忘れたように変わってた。
玄だって、転校、、、。

「ちづる、玄が転校するって本当なの?」 なれなれしく言った。悪かったかな

「ゴミ、捨てて来てから詳しい事言って良い?ちょっと待ってて」

しばらくしてちづるがこう言った。 「玄は、転校するよ。東京に」

「いつか分かる?同じクラスやろ」 ユウスケの言う事が当たってた。

「明日。土曜にいくみたい。クラスではもうお別れ会みたいな事やったし今日荷物積みみたい。」


こんな事聴いてどうしたかったんだろう。ちづるに聴いてもムダだったかな。
十六年間幼なじみだったのが。たった一年で玄とこんな離れるなんて。




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