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ミカンズのテーマ [作者:ミカンズ]

■7

練習が中断してからというもののアタシらは何にもやる気がしなかった。
インフェスが中止したかは分からなかったけど、参加申込所に書いてあった所から電話は来なくて、
それにまだ応募する途中だったから。バンド名も書いてないし
考える暇もないように思えた。アタシからみたら、入道雲のようにゆっくり歩いた気がした。

「はぁーこんな時間ばっかすぎてくのかぁ。」

鉄棒の練習をしてるアタシにちづるが言った。「なぁ玄やる気も失せるもんもうあせたわなぁ」

「あんさー見学者が立ってていいの?」話を変えた。

空気が夏の蒸し暑さでどんよりしていたから「いいんだよ。」ちづるが言う。

「インフェス出れんのかなぁ。お偉いさん死んでから何日もお笑い番組やって無いじゃん。」

「あんさぁ。そういうこと言わないでくんないっ。」逆上がりをしたら空が反対方向に見えた。

男子はバスケやってんだな。ユウスケはディフェンスのモノマネしてる。

「私はさぁ。ただたんになんでこんななっちゃったか聴きたいんよ。ファイファイのライブも中止らしーよ。」

切れ間から見えるのはアタシらの理屈にならない不満と、ゆっくりと旅に出かける入道雲だった。


次のお昼時間、ミカがこういって来た。

「玄。今日な実は申込書出して来た。インフェスに」

「そうなん。でもやるかなぁ分からんよちづるもその事ばっか言ってるし。」

「そりゃ気になるやろ。当たり前の事言わんといてよ」

入道雲みたいに時間が過ぎた。

「でれんかったらストリートライブやりゃええやん。」ミカが言う。

「無理やろ。ミカどうすんの。」ドラムだからさミカ。

プルルルルプルルルルル   ミカの携帯が鳴ってる。

「はい。もしもし」

電話を掛けて来た人はドスの聞いた声の人。男の人っぽい声の人だった。

「は、はじめまして、、。はい、、はぁ。」

ミカが声を高くして言う。どうしたんだろう初めての挨拶をしてるし。

「分かりました。はい、、仕方ないっすよね。はい、、でわ、、。」

通話時間一分と三十秒。
アタシたちの夢が崩れ去った。インフェス中止の電話だった。

練習もあんまりしてないけど、でもアタシらは頑張っていたんだ。
ちづるは手にまめがが何十個も出来るくらいベースの練習してた。崩れないように。
ユウスケはバトミントン部だから部活中にラケットの網を玄にして練習してた。遊びかも知れないけど。
一人一人。アタシらがどんだけ頑張ってもお偉いさんは生きてゆけないし、死んでゆく。
インフェスだって叶えられない。無力さが喉に最初に来た。
歌を歌いたかった。大きな声で無力さを痛感せずに。




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