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ミカンズのテーマ [作者:ミカンズ]

■1

下町の赤い夕焼けの景色に、商店街にお好み焼きのソースのたれた音が鳴り響いた感じ。
「ちょっとーユウスケはよう焼いてやー。あんたの店やろ。」玄が鉄板の上にあるソースをなめながら言った。
ユウスケはじんじんなるギブソンをなれた手つきで練習している。
「うるさいわ。ちょっと待て。後少しでファイファイ弾けそうなんや。」ウィーン。
鳴り響いたのは曲の最初を合図する感じの音。どこが弾けそうだよ。と僕は思ったけど。
「はよしてっていうてるやろー。おばちゃんが納豆持って来て食うとるや。腹ぺこぺこや。」
といって僕の顔を玄は見て「なぁ。ミカ。」と僕の名前を言った。
「そうや。腹減ったんや。ドラム叩いとると、手が痛くって体力も使うんやからな。」と気前の良いようなセリフを言った。
するとユウスケはやっとギブソンを大事にしまった。「大体。お前ら夜飯時はやいねん。普通は7時から食うんやぞ。」
「いいやんか。ユウスケ大体話って何や。」と僕が言うと玄がオレンジジュースを飲み干して言った。
「あんた、なんかのフェスにウチらと一緒で出たいんやろ?」と偉そうな感じで言った。
「その情報はヒロから聴いたんやな。さすが玄の手下情報部隊」とかすれた声でユウスケが言った。
なんだよ。僕だけか。知らなかったのは。今日は母さんお手製の無花果カレーライスだったのにさ
ジュー
僕が待ちきれなくってお好み焼きを切った音があまりにも大きい音であまりにも甘い匂いが漂っていて玄は嬉しそうな顔をして食べ出した。


玄は僕とユウスケと腐れ縁兼クラスメイトって所。あまり見ため印象女の子っぽくはないんだけど。
だって、邦楽なんて聴かないし。聞くとしても洋楽っぽい邦楽バンドとか。
見た目ってのもある。好きなものがピーナッツとチョコレートでニキビが出来そうなものばっか食べて、
スッピンでつるつるのおでこ見せてる。勉強ができて、
トランペットの迫力のある奇麗な音で校則違反のソックスだったはける。でも玄は僕にこういう。
「いいなぁ。ミカは女の子っぽくて」
好きで女の子っぽくしてるんじゃないに決まってるだろ。元々僕は女の子っぽい名前をしてて、
三兄弟の末っ子の上が二人女で女装人形代わりに使われてるのをみて玄が勝手に決めたことだ。まぁ、
はやまみかっていう名前は捨てがたく自分でも気に入ってるだなんていったら玄にどんだけ馬鹿にされるか。
なぁ。ユウスケ分かるか。

「分からん。大体お前もう落ちてんぞ。なに復活しちゃってんだよ。うをぉー」
ユウスケがギターの次にうまいのがテレビゲームのなんとかブラザーズだった。あいついっつもゼルダ使いやがって
俺にはピーチかよ。本当にやなこった
「んでさ。ユウスケ。本当にお前、俺らとファイファイガンスローファイやるつもり?」
ファイファイガンスローファイとは邦楽のインディーズバンドで、ギブソンと高そうなベースと迫力のあるドラムの上に流れる
歌声で洋楽みたいなバンドだ。僕が聴いたときはびっくりした。
日本語で喋ってるはずなのに、すごくカッコいい。ロンドンスターっていう曲が玄でも感動のあまり立たなくなったぐらい。
それでも、今度夏が終わって秋になる頃におこなわれるインディーズフェスにでるとかいってやがる。
玄はノリノリでこう答えた「あたしのトランペットでみんな驚かせたろ。」んなこと出来る訳ない。
だってそうじゃないか。自分一人が華やかにまったとしても、俺らとサウンドがあってなければ、ヘタバンド一色だ。
そんな事を考えてるうちに、また落ちてしまった。ピーチお前しっかりしろよ。
なんてな。



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