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プール by 小瓶


(注) 歌詞 でありません。曲の意味を勝手に解釈したものです。

【僕らの背と同じくらいのパイプから排水がドブ川に注ぎ込んでいた。
小人になった僕らは、いつの間にか川べりを流れてくるゴミの大きさに圧倒されながら
佇んでいると、一艘の笹舟が僕らの横に音も立てずに着いた。!何処に行くかなんてど
うでもいい。僕らが笹舟に乗ると、ゆっくりと滑るように漕ぎだした。
気がつくと、僕らは乗船券を握っていた。僕のは往復券、君のは何故か片道券だった。
船に揺られながら進んでいくと突然、川の流れが激しくなり、僕らは船の縁を必死に握
りながら、何か眩しい光に向かって突っ込んでいった】

…気がつくと、僕はベッドから体を起こした。
ふと横に視線を落とすと、じっとりと汗ばんだ君が小さな寝息を立てている。
夢か…

大学には好きな講師のゼミにだけ通って、後はぶらぶらやってた。
一応、女の子とも付き合ったりしたけど、でもその娘を好きになることもなかった。
そんな冴えない毎日だったけど、君に出会うことが出来た。
僕は君と過ごすうちに、まるで幼い子どものように男とか女とかの区別なしに付き合え
た。
君は作り笑いはしなかったけど、本当に面白いと思った時は大笑いしながらおどけてい
たね。
僕も心の底からわらった。ふたりで笑いあい、ケンカして…全てが輝いて見えた。

去年の夏の終わり、僕らは閉ざされた学校のプールにそっと忍び込んだ。
まだプールの水は抜かれていなかった。
泳ごうよ、と君は僕の顔を見て言った。
「水着ないのに?」僕が言いあぐねていると、君は唐突にワンピースを脱ぎ捨て、水し
ぶきをあげながらプールへ飛び込んだ。
僕が呆気にとられていると、25mのところでターンして僕の元へ帰ってきた君が言っ
た。「気持ちいい!一緒に泳ごうよ!」「いやボクは…ムリ」
…なんてはしゃいでいたね。
初秋の爽やかな風に吹かれながら、隠れて下着を脱いでワンピースを着た君と少しおし
ゃべりして、そして僕らはふとプールに視線を向けた。

陽の光を一身に浴びてきらめく水面…じっと見ていると心が遠くへはこばれてしまいそ
うな…
…ねえ、君はこの幻のようなプールに何を見ていたの?
声なき声で君を見つめて、僕はまた水面に視線を落とした。

梅雨時だった。君の妹さんから一本の電話があった。君が逝ったと。
君の家族とはつきあいがあったから、僕は通夜から葬儀まで立ち会わせてもらえた。
僕は「寝ずの番」を頼まれたので、一晩中君のそばにいられた。
僕は人の気配を確かめながらそっと棺のふたをずらし、冷たい君の唇にキスをした。

四十九日を迎えた。きみはささぶねの片道券であの謎の光の中へいってしまったんだ
ね。

「また来たよ」
…秋口を迎える頃、僕は君と行ったプールへ来た。
急に吹いた秋風に水面に小さな波が起こる。あの時と同じ、きらめく水面がある。

急に空が暗くなった。にわか雨が降ってきた。どうせすぐに止むだろう。
あの日の、ずぶ濡れだった君のように、僕もしとどに濡れていく。
空を見上げて、僕は泣いた。君がもういないということを悟り、僕は泣いた。

雲間から光が差してきた。いつしか雨も止んでいた。
それでも僕は立ち尽くしていた。
あの日のように、きらめく水面を眺めながら。



小瓶さんからの投稿です。



   
   
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